漆の質

漆は、採った場所や時期、採り方によって質が異なります。ウルシの木から採ったままの漆は、荒味といい、それを濾過したものが生漆です。もちろんそのままでも下地づくりなどに使われますが、固まると褐色になってしまうため、仕上げの上塗りに使うためには精製・加工が必要になります。この作業が「くろめ」や「なやし」と呼ばれているものです。生漆に熱を加えることなどで水分量を減らし、粘度を高めて塗りやすくしたり、つやのある仕上がりとなるように調整します。当然、この作業によっても漆の質は異なってきます。漆かきから精製まで、漆そのものにも熟練したさまざまな職人の技が活きているのです。


漆の時間
漆は、そのほとんどがウルシオールという成分です。ふつうの塗料のように溶剤が揮発して乾くのではなく、漆はウルシオールが酵素の働きによって酸化することによって固まります。この作用には適度な温度と湿度が必要で、高すぎても低すぎてもよくありません。実は、この反応は完成後もゆっくりと進んでいます。ですから、使いはじめはできるだけやさしく扱ってください。1年もすれば普通に使えるようになり、使い込んで3年ほどたつと底艶がでて完全に成熟します。しっかりと固まった漆は、酸やアルカリにも影響を受けることなく、数千年の時を超えるほどの耐久性を持つようになります。事実、約6,000年ほど前の縄文時代の古墳からも、木地そのものが朽ちてしまったのにもかかわらず、漆の塗膜そのものには色つやがあざやかに保たれている漆器が出土しています。


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